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【病態】
猫の鼻咽頭ポリープは、腫瘍性ではなく炎症性の増殖性病変です。主に中耳内の粘膜から発生します。若齢猫に好発し、長期にわたる上部呼吸器感染症や慢性中耳炎の結果として形成されると考えられています。発生したポリープは、耳管を通じて鼻咽頭へと伸展するため、呼吸や嚥下に支障をきたすことがあります。また、外耳道にまで進展すると、外耳炎や中耳炎の症状と重なり、頭振りや耳掻きなどの行動異常を示す場合もあります。
【診断】
呼吸困難、いびきや異常呼吸音
鼻汁や嚥下困難
耳だれ、頭を振る、耳を掻くといった外耳炎の症状
さらに、耳鏡検査により外耳道や中耳内のポリープの存在を確認し、必要に応じて内視鏡検査(鼻咽頭・口腔内の観察)やX線、CT検査などの画像診断を行います。これにより、ポリープの起源、進展範囲、隣接する構造との関係を詳細に評価し、他の疾患(腫瘍性病変、異物、感染症など)との鑑別を行います。確定診断のためには、摘出したポリープの病理組織検査が不可欠です。
【治療】
治療の基本は外科的切除です。治療法はポリープの大きさや進展範囲により異なりますが、一般的なアプローチは以下の通りです。
摘出手術
経口または経耳的アプローチ
軽度の場合は、全身麻酔下で内視鏡や耳鏡を用い、ポリープの付け根を慎重に切除します。
腹側鼓室胞骨切り術
ポリープが中耳や鼓室胞内に深く浸潤している場合は、腹側からの鼓室胞骨切り術により、根元から完全に摘出する方法が選択されます。
【予後】
一般的に、鼻咽頭ポリープは外科的に完全に切除できれば予後は良好とされています。切除後は呼吸や嚥下の症状が改善し、生活の質も向上します。ただし、摘出が不完全な場合やポリープが再発する例も報告されているため、術後の経過観察は不可欠です。また、術後に一時的な合併症(例えば、ホルネル症候群や顔面神経麻痺)が見られることもありますが、多くの場合は時間とともに改善します。
症例
4歳 未避妊メスネコ
保護した時からずっと鼻が詰まっているという主訴で来院されました。
レントゲン検査にて鼻咽頭に腫瘤を確認したため、口腔側から腫瘤を切除しました。
術後に一時的なホルネル症候群を併発しましたが、徐々に改善し今は耳に残存した腫瘤の対処を検討中です。
慢性鼻炎でお困りのネコちゃんはご相談ください。
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