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【病態】
犬の熱中症は、体温調節機能が破綻し、深部体温が著しく上昇することで全身の臓器障害を引き起こす急性疾患です。犬は人間のように汗で体温を下げることができず、主に口呼吸(パンティング)で放熱します。そのため、高温多湿な環境下では容易に体温が上昇します。特に夏場の屋外飼育、車内放置、散歩時の過熱、あるいは短頭種(フレンチブルドッグ、パグなど)では発症リスクが高く、短時間で体温が40℃を超えることもあります。体温上昇により、脳・肝臓・腎臓・消化管などの臓器に障害が及び、重症例では多臓器不全に陥ります。
【診断】
主な臨床症状は、激しいパンティング、よだれの増加、ふらつき、嘔吐、下痢、粘膜の発赤などです。体温が40.5℃以上に達している場合は、熱中症を強く疑います。さらに進行すると、意識障害、痙攣、血圧低下、ショック状態が見られることがあります。血液検査では、肝酵素(ALT、AST)、クレアチニン、CKの上昇、代謝性アシドーシス、電解質異常(特にナトリウム・カリウム異常)を認めることが多いです。DIC(播種性血管内凝固症候群)の兆候がある場合には、凝固系検査の異常(PT・APTT延長、血小板減少)が見られます。
【治療】
治療の最優先は迅速な体温の低下です。濡らしたタオルや冷水をかける、扇風機やエアコンで風を当てるなどして、直腸温が39.5℃程度に下がるまで冷却します。氷水の使用は末梢血管を収縮させて逆効果になるため避けます。病院では、静脈輸液により循環の安定と電解質補正を行い、必要に応じて酸素吸入、抗炎症薬、抗凝固療法を行います。重症例では腎不全や肝不全の管理が必要となる場合もあります。治療後も臓器障害は遅れて発現することがあるため、48〜72時間の入院モニタリングが推奨されます。
【予後】
早期に適切な冷却と支持療法が行われた場合、回復は良好で、後遺症を残さずに治癒することが多いです。しかし、発見が遅れ、体温が41℃を超える時間が長く続いた場合は、脳障害やDIC、多臓器不全によって致死率が高まります。特に来院時に意識障害がある症例では、死亡率が50%を超えるとの報告もあります。予防には、真夏の日中の散歩を避けること、車内や閉鎖空間に放置しないこと、常に清潔な飲水を確保することが極めて重要です。短頭種や高齢犬、肥満犬では特に注意が必要です。
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