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イヌの胆嚢粘液嚢腫 2025.04.30

【病態】
胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)は、犬の胆嚢内にゼリー状の粘液(ムチン)が過剰に分泌され、胆嚢が拡張・変形してしまう病気です。この状態が進行すると、胆汁の流れが滞り、胆嚢炎や胆管の閉塞を引き起こすことがあります。さらに重症化すると、胆嚢が破裂して腹膜炎を起こすこともあります。

中高齢の犬で発生しやすく、特にシェットランド・シープドッグ、ミニチュア・シュナウザー、アメリカン・コッカー・スパニエルなどの犬種に多い傾向があります。また、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や甲状腺機能低下症などのホルモン異常、脂質代謝異常などが背景に関与していると考えられています。

【診断】
胆嚢粘液嚢腫は、主に血液検査と腹部の超音波検査によって診断されます。血液検査では、肝臓に関連する酵素(ALT、ALP、GGT)の上昇や、胆汁うっ滞を示すビリルビンの上昇、炎症を示す白血球の増加などが見られることがあります。

腹部超音波検査では、胆嚢の内部に「キウイフルーツ状」や「星状」とも表現される特徴的な構造が観察されることが多く、これが診断の決め手となります。状況に応じて、CT検査やレントゲン検査が追加されることもあります。

【治療】
治療法は病状の重症度によって異なります。無症状または軽度の症例では、内科的治療が選択されます。胆汁の流れを改善する薬剤や、肝臓の機能をサポートするサプリメントを使用します。また、胆嚢炎が疑われる場合には抗菌薬を併用することもあります。基礎疾患としてホルモン異常がある場合は、その治療も重要になります。

一方で、胆嚢が破裂している、胆管が閉塞している、あるいは症状が強く出ている場合には、外科的に胆嚢を摘出する手術(胆嚢摘出術)が必要になります。手術は開腹によって行われることが一般的です。周術期には、肝機能や凝固系の状態をしっかり評価し、感染のリスク管理を行いながら慎重に進めます。

【予後】
胆嚢粘液嚢腫は、早期に発見され、適切な内科的管理が行われた場合には良好な経過をたどることが多い病気です。定期的な超音波検査で経過を観察することにより、無症状の段階で発見し、悪化を防ぐことが可能です。

ただし、胆嚢が破裂してしまった場合や重度の胆管閉塞を伴う場合には、命に関わる可能性があり、迅速な手術と集中治療が必要となります。適切な時期に手術が行われ、合併症がなければ、術後の生活の質(QOL)は良好です。

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