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チンチラの腸重積 2025.07.06

【病態】
腸重積とは、腸管の一部が隣接する腸管内に滑り込むことで生じる閉塞性疾患で、腸の内容物の通過障害や血流障害を引き起こします。チンチラではまれではありますが、若齢個体にやや多く、下痢後の蠕動亢進や腸炎、寄生虫感染、腫瘍性病変、異物摂取などが誘因とされています。小腸同士で起きることが多いですが、大腸や盲腸での発生も報告されています。

【診断】
主な症状は急性の腹痛、食欲不振、元気消失、排便停止、腹部膨満、時に血便です。重度の場合、ショック状態に進行することもあります。
身体検査では腹部圧痛が見られ、直腸検査で腸管内に“腸管様の構造物”を触知することがあります。
確定診断には腹部X線検査によるガス像や腸管の二重構造の確認、超音波検査での「ターゲットサイン」や「ドーナツサイン」(輪切り状に見える腸管)が有用です。重度の症例では血液検査で脱水や電解質異常、代謝性アシドーシスがみられる場合もあります。

【治療】
原則として外科的整復または腸管切除が必要です。腸重積の持続時間が長いと、腸管壊死や穿孔のリスクが高まり、予後不良となるため、早期の外科対応が求められます。術前にはショック対策として点滴療法、保温、疼痛管理を行います。
術中に整復が困難な場合や壊死が認められる場合には、腸管切除と吻合術が必要となります。術後管理では絶食・輸液管理・抗菌薬・胃腸運動促進剤を用いた慎重なケアが求められます。

【予後】
腸重積の早期発見・早期手術ができた場合は比較的良好な経過が期待されますが、発見が遅れ腸管壊死や穿孔が起きている場合は術後死亡率が高く、予後不良となります。
術後は腸癒着や再発のリスクもあるため、術後1週間以内の経過観察が重要です。再発防止には基礎疾患(腸炎、寄生虫、異物摂取など)の特定と除去が必要です。

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