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【病態】
コクシジウム症は、腸管内に寄生する原虫(主に Isospora 属)によって引き起こされる感染症です。フトアゴヒゲトカゲやヒョウモントカゲモドキなどの飼育下個体で特に多くみられ、ストレスや飼育環境の悪化、過密飼育などによって発症リスクが上昇します。
感染は糞便中に排泄されたオーシスト(虫卵のような構造)の経口摂取によって成立し、腸粘膜上皮に寄生して増殖します。これにより腸粘膜が損傷し、下痢、血便、体重減少、脱水、食欲不振などの症状を呈します。
特に幼体や免疫力の低下した個体では、短期間で重度の消耗や死亡に至ることがあります。また、感染を繰り返す慢性型では、発育不良や持続的な軟便が続くこともあります。
【診断】
診断は主に糞便検査によって行われます。新鮮な糞便を遠心浮遊法などで検査し、コクシジウムのオーシストを顕微鏡下で確認します。感染初期では糞便中にオーシストが少ない場合があるため、複数回の検査が推奨されます。
また、重度の感染では血液検査で脱水や貧血、電解質異常が確認されることがあります。慢性経過をとる場合には、X線検査で腸内容物の停滞やガス貯留などの二次的変化を認めることもあります。
同様の症状を呈する他の寄生虫疾患(クリプトスポリジウム症など)や細菌性腸炎との鑑別診断も重要です。
【治療】
治療の基本は、駆虫薬による寄生虫の除去と全身状態の支持療法です。
併せて、脱水や電解質異常がある場合には輸液療法を行い、食欲不振に対しては強制給餌やビタミン補給を行います。
また、感染源の再曝露を防ぐために、ケージの完全消毒(熱湯または次亜塩素酸による洗浄)や糞便の即時除去を徹底することが重要です。オーシストは環境中で長期間生存するため、再感染防止策が治療成績を左右します。
重度例や他疾患との併発例では、長期的な治療管理が必要になる場合もあります。
【予後】
軽度または早期に治療を開始した症例では、良好な経過をたどることが多く、数週間で回復が期待できます。
しかし、幼体や免疫低下個体では急速に全身状態が悪化し、致死的となることもあります。 また、慢性化すると完全な駆虫が困難となり、再発や持続的な体重減少を繰り返すケースもあります。
予後を良好に保つためには、定期的な糞便検査と環境衛生管理(ケージ清掃・乾燥・通気性の確保)が不可欠です。新規導入個体に対する隔離検査(検疫)も有効な予防策とされています。
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