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ハリネズミの乳腺腫瘍 2025.07.05

【病態】
ハリネズミにおける乳腺腫瘍は、特に2歳以上の雌個体に好発し、全体の腫瘍症例の中でも比較的高い頻度で報告されています。乳腺腫瘍には良性および悪性の病変が存在しますが、実際の臨床では悪性腫瘍、特に乳腺癌の占める割合が高く、報告によっては70%以上が悪性とされています。腫瘍は主に腹部乳腺部の腫瘤として発生し、急速な増大や潰瘍化、出血、周囲組織への浸潤を伴うことがあります。進行例では肺や腋窩・鼠径リンパ節への遠隔転移が認められ、全身状態の悪化を引き起こします。

【診断】
視診および触診により乳腺部に腫瘤を認めた場合、まずは針吸引生検を実施し、細胞学的に乳腺由来の腫瘍であるかを判定します。加えて、胸部X線検査による肺転移の有無の確認、腹部超音波検査によるリンパ節腫大や他臓器病変の評価、ならびに血液検査による全身状態の把握を行います。これらの検査により、手術適応の判断と術前評価を実施します。検査には沈静が必要なことが多く、検査と手術を同時に実施する場合が多いです。

【治療】
治療の第一選択は外科的切除となります。腫瘍が限局している場合、乳腺組織とともに周囲の皮下組織を広範囲に切除することで、局所再発のリスクを低減することが可能です。麻酔リスクを考慮しつつ、周術期管理を徹底することで、比較的安全に手術を行うことができます。摘出後は病理組織学的検査を実施し、腫瘍の悪性度、浸潤性、切除断端の状態などを評価します。現時点でハリネズミに対する化学療法のエビデンスは限られており、再発・転移症例では対症療法を中心とした緩和的管理が行われる場合もあります。

【予後】
良性腫瘍に対しては外科的摘出により長期生存が期待できます。悪性腫瘍の場合、早期に切除可能であれば6か月〜1年以上の生存期間を得られることもありますが、再発や転移を伴う場合には予後は不良であり、生存期間中央値は3〜6か月程度とされています。早期発見・早期治療が予後の改善につながるため、2歳以上の雌には定期的な健康診断を推奨します。

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