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カメの甲羅損傷 2025.10.17

【病態】

カメは外見上、堅固な甲羅によって体を守っていますが、甲羅は背骨や肋骨と一体化した骨構造であり、強い外力が加わると容易に損傷します。交通事故や落下事故などによって甲羅がひび割れたり、破断したりすることがあり、損傷の程度によっては内臓損傷や出血、感染を伴うこともあります。特に車両との接触では、甲羅の一部が圧壊して内部の肺や肝臓、消化管にまで損傷が及ぶことがあり、命に関わる重大な外傷となります。

【診断】

外見上の亀裂や欠損は視認可能ですが、表面的な損傷だけではなく、内部臓器の損傷を伴うことが多いため、慎重な診断が必要です。初診時には、出血やショック症状の有無を確認し、X線検査で甲羅下の骨折線や内臓の位置異常、肺への損傷などを評価します。必要に応じて超音波検査を行い、胸腔内出血や内臓破裂を確認します。外傷部からの膿汁や腐敗臭がある場合には、感染や壊死が進行している可能性があります。

【治療】

軽度の損傷では、傷口の洗浄・消毒を行い、抗菌薬を投与して感染を防ぎながら自然治癒を促します。亀裂が大きい場合や甲羅がずれている場合には、パテ、金属プレート、ワイヤーなどを用いて甲羅を整復・固定します。深部に及ぶ重度損傷では、デブリードマン(壊死組織の除去)を行い、内部臓器の損傷を修復する外科処置が必要になります。出血や脱水がある場合には、補液や抗生剤による全身管理を行います。カメは代謝が遅いため、治癒には数ヶ月から半年以上を要することもあり、定期的な再評価が欠かせません。

【予後】

軽度の表層損傷であれば良好に回復することが多いものの、肺や肝臓などの内臓損傷を伴う場合の予後は慎重です。感染が進行すると敗血症や骨髄炎を起こし、死亡するリスクが高まります。治療後は紫外線照射や温度管理などの飼育環境を適正に保つことが、治癒の促進に大きく寄与します。また、回復後も甲羅の形態異常や成長不全が残ることがあるため、長期的な観察が必要です。

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