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猫の尿道閉塞 2025.07.30

【病態】
猫の尿道閉塞は、特に若齢から中齢の去勢済み雄猫に多く見られる緊急性の高い泌尿器疾患です。尿道が狭く、異物が詰まりやすいため、結晶や粘液、炎症産物、または小さな結石によって尿の通過が遮断されることがあります。排尿不能が数時間から1日以上続くと、膀胱は過伸展し、腎機能障害や高カリウム血症を引き起こし、重篤な心機能不全に進行する危険性があります。誘因としては、ストレス、飲水量の不足、肥満、低活動、特発性膀胱炎、尿石症などが関係します。

【診断】
初期症状としては頻繁な排尿姿勢、トイレ内での鳴き声、陰部を過剰に舐める、嘔吐、食欲不振、沈うつなどが見られます。身体検査では膀胱が硬く膨張し、腹部に痛みを示すことがあります。診断は視診、触診、尿道カテーテルの挿入試験による閉塞の確認に加え、血液検査による高カリウム血症や腎機能異常の確認、レントゲンや超音波検査による尿石や膀胱壁の評価を行います。

【治療】
緊急対応としてまず全身状態を安定させ、尿道閉塞の解除を行います。導尿による閉塞解除後は、カテーテルを数日間留置し、再閉塞のリスクを低減させながら排尿管理を行います。高カリウム血症が見られる場合には、カルシウム製剤、インスリン、ブドウ糖の投与などで電解質の是正が必要です。

再発率が高いため、治療後は再発予防として食事療法、水分摂取の増加、生活環境の見直しを徹底します。しかし、尿道閉塞を繰り返す症例では、内科的管理のみでは限界があるため、外科的に尿道の通過路を広げる手術が推奨されることがあります。この手術では陰茎の尿道を切開し、広い開口部を形成することで物理的な閉塞リスクを大幅に軽減できます。

【予後】
初回の閉塞で早期に処置が行われた場合、短期的な予後は良好です。ただし再発率は30〜50パーセントと高く、1回目の閉塞後も継続的な管理が必要です。再発を繰り返す場合や、尿道の瘢痕形成が顕著な場合には、会陰尿道瘻術によって長期的な予後を安定させることが可能です。手術には一定のリスクが伴うものの、生活の質を保つために必要な選択肢となることが多く、慎重に検討する必要があります。放置すれば命に関わるため、異変に気づいた場合は速やかな受診が求められます。

 

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