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猫の心筋症 2025.04.22

【病態】
猫の心筋症は、心臓の筋肉である心筋が異常をきたし、心臓の収縮機能や拡張機能に障害を引き起こす病気です。最も一般的なタイプは「肥大型心筋症(HCM)」で、心筋が異常に肥厚し、心臓のポンプ機能が低下します。また、「拡張型心筋症(DCM)」や「拘束型心筋症(RCM)」もありますが、猫においてはHCMが圧倒的に多く見られます。

HCMは猫の心臓病の中で最も一般的なものであり、特に中高齢の猫に多く発症します。遺伝的要因が関与している場合もあり、特にマンクス猫やメインクーン猫などの特定の品種に多く見られることが知られています。心筋の肥厚によって心臓が硬くなり、血液の流れが悪化し、最終的には心不全や血栓症を引き起こすことがあります。

【診断】
猫の心筋症の診断には、聴診や心臓の音を確認することから始まります。心臓病を疑う場合、心雑音や不整脈が聴取されることがあります。診断を確定するためには、心エコー検査(超音波検査)が最も重要で、心筋の厚さや心臓の動き、血流の状態を詳細に確認できます。

また、胸部レントゲンや心電図も有効です。胸部レントゲンで心臓のサイズや肺の状態を確認し、心電図で不整脈の有無を調べます。さらに、血液検査で心筋障害を示す指標(例えば、心筋特異的な酵素の上昇)をチェックすることもあります。

【治療】
心筋症の治療は、病気の進行具合や症状に応じて異なります。肥大型心筋症(HCM)の場合、症状が現れ始めた段階で、心臓の負担を減らすための薬物療法が行われます。主に、ACE阻害薬やカルシウム拮抗薬(アムロジピンなど)を使用して、心筋の過剰な収縮を抑制し、血圧をコントロールします。

心不全が進行すると、利尿薬や強心薬を使って体液の排出を促し、心臓の負担を軽減します。血栓症が発生している場合、抗血栓療法を使用して、血栓の予防や治療を行います。

また、食事の管理も重要です。低ナトリウムの心臓病用食事を与えることで、体内の水分のバランスを保ち、心臓への負担を減らします。

【予後】
猫の心筋症は進行性の病気であるため、早期発見と治療が予後を大きく左右します。適切な治療が行われると、症状をコントロールし、比較的安定した生活を送ることができる場合もあります。特に、軽度の肥大型心筋症では症状が現れないこともあり、定期的な検査で早期に発見できると良い結果が得られることが多いです。

一方で、症状が重篤になると、心不全や血栓症のリスクが高まり、予後が悪化することがあります。急性の心不全や血栓による塞栓症が発生すると、命に関わることがあるため、症状が急変した際は早急な対応が必要です。

進行の早さや治療の反応には個体差があるため、飼い主さんの観察と定期的な動物病院でのチェックが非常に重要です。

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