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猫の猫伝染性腹膜炎(FIP) 2025.04.22

【病態】
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルス(FCoV)によって引き起こされる重篤な感染症です。もともと猫コロナウイルスは多くの猫が保有している比較的一般的なウイルスですが、ごく一部の猫で突然変異を起こし、強い病原性を持つFIPウイルス(FIPV)に変化することで発症します。

FIPは、主に若齢の猫や多頭飼育環境にいる猫、免疫が弱っている猫で発症しやすいとされています。発症すると、ウイルスが全身の血管に炎症を引き起こし、臓器にさまざまな障害をもたらします。FIPには「ウェットタイプ(滲出型)」と「ドライタイプ(非滲出型)」の2つのタイプがあり、症状や進行具合が異なります。

【診断】
FIPの診断は非常に難しく、確定診断が難しいことも多いです。血液検査では、炎症の指標であるグロブリンの上昇や、リンパ球の減少、貧血などが見られることがあります。FIPが疑われる猫では、FCoV抗体価の測定や、特に「A/G比(アルブミン/グロブリン比)」の低下が診断の一助となります。

ウェットタイプでは、腹水や胸水がたまるため、その貯留液を採取して性状や成分を分析したり、PCR検査でFIPウイルスを検出することがあります。ドライタイプは臓器にしこりのような病変ができるため、画像検査(超音波やCT)で評価したり、場合によっては生検を行うこともあります。

【治療】
かつてはFIPは「治らない病気」とされていましたが、近年ではモルヌピラビルなどの抗ウイルス薬の登場により、治療可能な病気となってきています。これらの薬はFIPウイルスの複製を抑える働きがあり、世界中で多くの治療報告がなされています。

日本では正式に認可されていない薬剤が多いため、入手や使用に関しては慎重に対応する必要がありますが、FIPの診断が早期で、適切に治療が行われれば、回復する可能性も十分にあります。その他の治療としては、症状を和らげるための支持療法(輸液、栄養管理、抗炎症薬など)も重要です。

【予後】
FIPは、発症して放置すると非常に予後の悪い病気ですが、早期に診断し、抗ウイルス薬による治療を開始できれば、現在では回復する猫も増えています。特にウェットタイプの猫は治療への反応が良いケースが多く、寛解する例も報告されています。

ただし、ドライタイプは診断が遅れやすく、治療反応にも個体差があるため、定期的なモニタリングや長期の治療が必要になることがあります。ストレスを減らし、清潔で安定した生活環境を整えることが最大の予防策となります。

 

当院でも治療薬を扱っております、お困りの方はご相談ください。

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