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猫の鼻腔内腫瘍 2025.05.17

【病態】
猫の鼻腔腫瘍は、鼻の中や副鼻腔に発生する腫瘍性疾患で、比較的まれではありますが高齢の猫に多くみられます。腫瘍が進行することで鼻腔内の構造が破壊され、慢性的な鼻づまりや鼻出血、くしゃみ、呼吸困難などの症状が現れます。また、眼の突出や顔面の変形が見られることもあります。

猫において多く見られる鼻腔内腫瘍には、リンパ腫、腺癌、扁平上皮癌の3つが代表的です。リンパ腫は鼻腔内に限局して発生することもありますが、多中心型の一部として現れることもあります。腺癌や扁平上皮癌は局所浸潤性が強く、周囲の骨や眼窩、脳へと拡がることがあります。いずれの腫瘍も、発見が遅れると呼吸器症状の悪化だけでなく、生活の質の大きな低下を招くことがあります。

 

【診断】
診断はまず、慢性的なくしゃみや鼻汁、片側性の鼻閉・鼻出血などの症状をもとに、腫瘍性疾患を疑って精査を行います。一般的な血液検査では決定的な所見が得られにくいため、画像診断が非常に重要です。X線検査では骨の破壊や軟部陰影の増加を確認できる場合がありますが、より詳細な評価のためにはCT検査が推奨されます。CTでは腫瘍の大きさ、左右対称性、骨の浸潤、眼や脳への進展状況などを正確に把握することができます。

確定診断のためには、鼻腔内の組織を採取して病理検査を行う必要があります。これは麻酔下で内視鏡や鼻腔フラッシュによって生検を行うか、外科的に採材することで行われます。組織型が分かることで、治療方針の選択に大きく影響します。

 

【治療】
治療は腫瘍の種類と進行度により異なりますが、外科手術、放射線療法、化学療法のいずれか、あるいはこれらを組み合わせて行います。猫の鼻腔腫瘍において最も効果的とされるのは放射線治療で、特にリンパ腫や腺癌に対しては一定の寛解が期待できます。

リンパ腫であれば、化学療法(多剤併用プロトコルなど)も選択肢となり、全身的な病変に対応できます。扁平上皮癌や腺癌では、腫瘍が限局していれば外科的切除が試みられる場合もありますが、解剖学的に完全切除は難しく、補助的な放射線療法が併用されることが多いです。鼻出血や感染に対しては、抗生物質や止血剤、疼痛管理を行い、QOLの維持にも努めます。

 

【予後】
予後は腫瘍の種類や進行度、治療の可否により大きく異なります。リンパ腫は化学療法や放射線療法に比較的反応しやすい一方で、腺癌や扁平上皮癌などの上皮系腫瘍は局所浸潤性が高く、再発しやすいため、予後は一般的に慎重に見積もる必要があります。

いずれの場合も、早期の発見と診断、適切な治療の選択がQOLの維持と予後の改善に重要な鍵となります。鼻づまりや鼻出血などの症状が持続する場合には、速やかに専門的な検査を受けることが望まれます。

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