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鳥の過発情 2025.05.17

【病態】
鳥の過発情とは、通常の繁殖期を超えて長期間または頻繁に発情状態が持続することで、ホルモンの過剰分泌や行動異常、体調不良を引き起こす状態を指します。本来、発情行動は日照時間や温度、栄養状態、繁殖のための環境(巣箱やパートナーの存在)などに影響を受けて自然に現れるものですが、飼育下の鳥では季節感のない生活環境や飼い主との過度な接触、栄養過多などにより、発情刺激が継続的に加わることで過発情に至ることがあります。

過発情が続くと、雌では卵詰まり(卵塞)や卵巣の腫大、偽卵の形成などの繁殖器系のトラブルを起こすことがあり、雄では持続的な鳴き声や攻撃性の亢進、性的な行動(吐き戻しやマウントなど)が強く出ることがあります。いずれの場合も、身体的にも精神的にも大きな負担がかかり、免疫力の低下や慢性的なストレスにつながります。

 

【診断】
診断は、飼育環境や飼い主との関わり方、発情の頻度や行動の変化についての詳細な問診に基づいて行われます。特に、吐き戻しや鳴き声の頻度、巣材のようなものへの執着、発情に関連するポーズや自己刺激行動の有無を観察することが重要です。雌の場合は、腹部の膨満感や排便異常がある場合には卵塞などの繁殖器疾患が疑われるため、X線検査や超音波検査などを用いて精査を行うこともあります。

 

【治療】
治療の基本は、発情の原因となっている環境要因を見直すことです。まず、日照時間を制限し、1日10時間以下の明るさで生活させるようにします。また、巣材や鏡、暗所など発情を誘発する物品を取り除きます。飼い主が過度に構いすぎている場合や、身体に触れる頻度が高い場合は接触を控え、鳥との距離感を見直すことも効果的です。

栄養面では、高カロリーなシードや卵餌の過剰な給餌は避け、発情を助長しにくいペレット中心のバランスの取れた食事へと切り替えます。症状が重度で環境調整だけでは改善が見られない場合には、ホルモン療法を用いることもありますが、副作用のリスクがあるため、慎重な適応判断が必要です。

 

【予後】
適切な環境調整と生活習慣の見直しができた場合、多くの個体で発情行動は落ち着き、健康状態も安定します。ただし、長期間にわたり過発情が続いていた場合や、すでに繁殖器の異常が発生している場合には、慢性化して治療に時間がかかることがあります。また、環境が再び発情刺激に満ちた状態に戻ると再発するリスクが高いため、長期的な観察と予防的な管理が必要です。

飼い主の関わり方が大きく影響する問題であるため、鳥との適切な距離を保ちつつ、健康的な生活環境を維持することが、予後の改善と再発防止の鍵となります。

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